初めて海外でゲストハウスに泊まってみた。
新しい体験だし、安いし、他の旅人とお喋りできたら楽しいだろうし、と三拍子揃った完璧な選択だった。
様々なトラブルに見舞われ、ゲストハウスに着いたのは24時過ぎ。
皆さんはゲストハウスと想像するとどんな絵を思い浮かべるだろうか。僕は日本で何回かゲストハウスを利用したことがあったので、少なくとも一軒家をイメージしていた。
マンションの一室だった。そんなパターンもあるのかと驚いたが、まあたしかに1500円だったしそんなこともあるかと思った。
ドアを開けると、直接リビング。部屋は暗く、ソファベッドには数人の男が大口をあけて既に寝ている。え、こんな雑魚寝スタイルなの?自分の部屋ねえの?というのが最初の感想だった。
そもそもジョーどれ?
事前にメッセージのやり取りをしていたオーナーのジョーがどれか、そもそもいるのか分からない。
最寄りのスマホゲームに勤しむにいちゃんに「Joe? フ、who?」と達者な英語で聞くと、ソファベッドで寝ていた1人の男を起こしてくれた。
ジョーはガタイの良い男だった。英語で色々部屋の使い方を教えてくれたが、疲れていたので(そう、疲れていなければ絶対聞き取れたはずなのだ俺の英語力なら)ほぼ分からなかった。ひとまず自分のベッドがあることだけは分かり、疲れすぎてもいたのでシャワーも浴びず寝ることにした。
道路に面した建物の12階の部屋で、道路からは深夜でもクラクションがなっていた。中国語が喧しいしいだけでなく、道路もうるさいのだ。ただ、この雑然としたゲストハウスで、クラクションを下の方に聞きながら自分のベッドで、疲れた体を横たわらせたのは何か心地よかった。
快眠だった。あんなに疲れていたはずなのに6時間ほど寝たら自然と目が覚めた。日本のニート時代(退職後出国前の1週間)は、あんなに惰眠を貪っていたのに不思議。
少し回復した頭で、朝にゲストハウス内を散策した。3部屋くらいしかないけど。
改めて「汚ねえ」と感じた。
ものが多い。服が色んな場所に干してある。トイレとシャワーが同じ。トイレがくせえ。
あと「意外とみんな無口だな」というのも発見だった。ゲストハウスといえば旅人が円座になって和気藹々と喋るイメージがあるが、みんな目も合わせない。
そんなゲストハウス。
でも幻滅したかというと、意外とそんなこともなかった。
まず自分は意外と汚さ耐性がありそうだという発見がある。くせえトイレ兼シャワー部屋でもそんなに苦なく使えたし、どうせ汚ねえし臭えならそれを超えてやるという謎の向上心で、ワイルドな格好で用を足しながら鼻をほじるということをしてみた。
深夜特急の沢木耕太郎さんはインドにて、手でうんこ後の尻を拭いた時に「自由」を実感したと書いていたことを思い出した。これが自由か。(違う)
インドの方が汚そうなので、汚い耐性あるという自信がそこでも通用するか、見ものである。
そして、あまり喋らないのも、慣れると苦ではなくむしろ心地よいと感じた。そもそもすごい仲の良い友達というのは、無口の時間が苦ではない。それに近いのかもしれない。無理にでも喋らなきゃというのはストレスなので、少しでもそこから解放されつつある自分に祝杯をあげたい。無口万歳。無音を楽しもう。
2日目の朝、宿近くのカフェでこれを書いた。今からは何の予定もない。今日はしかも同じ場所に泊まるので夜の移動で困る心配もない。どこ行こっかな〜。