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【7/23①】あっくんのガンジス沐浴を撮影する

旅行
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4時半。ここは高田馬場ではない。スケート部の朝練のような時間にここバラナシで早朝起床した。

今日は早朝のガンジスで、恩人あっくんが満を持して沐浴をする。その撮影係に自主的に立候補した。バラナシ空港で命を救ってもらったささやかなお返しである。

5時にガンジス川集合となっていた。なぜか前日うまく寝れず、確実に寝不足的な頭のぼやーっと感があったが、恩人の一世一代の沐浴、這ってでもガンジスに向かう。

無事ほとりで落ち合えた。

 

インドは私にとっては旅2カ国目であり、全行程の1/4程度に過ぎないが、あっくんにとってはもっと深い意味がある。あっくんは仕事を1ヶ月休んで、タイ、ベトナム、香港をそれぞれ1週間程度旅している。この旅の最終目的が、インドであり、バラナシであり、ガンジス川で沐浴することなのだ。

「何が起こるか分からないけど、とにかくガンジス川で沐浴をすることで僕の旅は完了するんです」

あっくんは全旅を通じて沐浴に備えていた。インドに入るまで、もっというとニューデリーまでは沐浴に少し不安があったという。ただ実際にバラナシに入ってその空気に触れて、怖さが無くなったと後で聞いた。また昨日の時点でバラナシの住人からやり方や注意点などのさまざまな聞き込みをしていた。

ちょっとスピリチュアル要素もあるんですけど笑、と冷静な前置きをしつつ

・怖がるとバチがあたって体調を崩す

・茶化しで入ってはならない、感謝の気持ちをもって入る

というtipsを共有してくれた。

意外とスピリチュアルな世界が好きなことに加え、何かエネルギーを感じざるを得ないバラナシという街にあって、「そういうこともあるだろうな」と自然に納得しながら聞いていた。

 

そんな真っ直ぐな男、あっくんがついに今日沐浴する。そしてそれを撮る俺。

ここで思い出して欲しいのが、あっくんの職業は俳優である。なんという機会だろうか、ただのド素人が俳優を撮影するという任務を仰せつかってしまったのだ。

「絶対いつもプロのカメラマンに撮ってもらってるから、“へ、素人だな”って心の中で思われちゃうだろうな〜あっくん良い奴だから絶対言わないだろうけど…」

と、一世一代の場に、かなりの責任で立ち会った緊張を感じていた。

空いていて、見晴らしの良い場所を少し探し、あっくんは持っていた荷物を俺に渡した。

「いってきます!」

 

そこからあっくんは本当に集中しながら、一連の所作を行なっていた。「さすが俳優」という言葉は使いたくない。2日で十分に伝わるほど、あっくんは誠実で良いやつだった。職業など関係なく、そんな人柄を知っているからこそ、あっくんの沐浴姿は美しく、見ているこちらまでガンジスのご利益を得られた気分になった。

そんな敬虔な気持ちの一方で、こっちには撮影という重要な任務がある。「水も滴る良い男とはこのことか」と見惚れつつ、数を撮ればどれかヒットするはず…!という素人発想で夢中で撮った。

 

無事沐浴が終わった。あっくんは本当に充実した表情で川から上がってきた。ささっと撮った写真を見せると、満足気な表情をしてくれたのでホッとした。

沐浴後は二人でボートに乗ってガンジス川を眺めることにした。時間はまだ6時である。交渉を全て年下のあっくんに任せ、一人300ルピーで交渉を成立させてくれた。

1時間ほど手漕ぎボートに揺られ、ガンジス川とほとりで沐浴する人々を眺める。モーターボートもあったのだが、手漕ぎがおすすめだ。川がもつ時間感覚には手漕ぎボートがマッチしている。

 

粋なあっくんはスマホからガンジス川をテーマにした曲、ALの『メアリージェーン』を流してくれた。初めて聞いた曲だったが、まさに今聞きたい曲といった感じだった。

旅はすごい。大きな思い出がたくさんできる。そのどれもがその瞬間、この思い出は旅で一番だと思えるもので、朝のガンジス川をあっくんと眺めている今もまさにそれだった。

「順位なんてつけるもんじゃないわよ」とグレートマザーガンジスリバーから声がする気がする。そうするぜマザー。

ボートを降りた後、二人でカフェで朝ごはんを食べた。

 

時間は7時半。今日はこんな朝で一日が始まる。



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