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【7/23③】火葬場を眺める

旅行
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ガンジス川のほとりには火葬場がある。

バラナシではそこでご遺体を火葬し、その灰をガンジス川に流す。ヒンドゥー教ではこのことがとても幸福なことと考えられていると現地の人に聞いた。

この火葬場が見たかった。色々あるが、そこを見て自分が何を思うのかが気になっていた。

聞いていくと、宿の近くには2つの火葬場があるようだった。

ひとつがその名をマニカルニカー。いかにも魔術的な響の名前を持っている。マニカルニカーは大きく有名な火葬場で、人は多く、寄付を求めてくる人も多いのでゆっくりは見られないと聞いた。

もうひとつが、ずっと小規模なハリッシュチャンドラ。こちらは静かに見れるというのでまずはこちらに行こうと決めた。

10分ほどガンジス川沿いを歩くと火葬場に着いた。

確かに何かが焼かれている。何かというのは、それがご遺体かどうかよくわからなかったからだ。ご遺体自体は布に包まれていること、木組みの中にご遺体が置かれていること、おそらく焼かれてから時間がかなりたっていたなどの理由からである。

さてこの場に立ってみて、「自分が何を感じるのか」という、当初気にしていたことがどうなったか。

これが正直、あまり大きな何かといったものは感じなかった。

そこにいる人たちもあまり悲壮な顔になっているかというと全くそうではなく、これが日常、といった平穏さが漂っていたことが大きいと思う。

感想が湧かなかったので、とりあえず見たものをそのまま写実的に書き残しておこうと思った。そのままのメモを載せる。

火葬場:涙はない、犬、山羊がまわりで地面をつついている。豪華な布。杖をついて歩いている老人。陽炎の奥に乗せられる遺体。地面で燃やされるご遺体と、台の上で燃やされる遺体。駆け回っている山羊。普通に部外者の俺がずっとみていられる距離。すごい時間がかかる。すでに焼かれ始めているご遺体。上半身がわかる。黒色。顔には布が巻かれていて、そこに火はついていない。これから台に乗せられて、まさに燃やされんとするご遺体。屯する黒山羊、白山羊、橙色の花を食べる。通る船の人が合唱している。日本の火葬の効率性について。ベンチがある。みんなが見ている。どこから火をつけるのだろうか。心臓の下のあたりに火のついた藁束を入れる。つける前に、藁で何周かして叩く。みんなそれを見ている。角度変えてみるか。笑顔さえ見える。相当火に近づく白山羊。山羊の不気味さが分かった。煙の匂いはお葬式の匂い。

少なくとも今は自分の言葉の感想はない。「死が身近に感じられた」とか「死はそれほど怖くないのだ」など、聞いたようなことやそれっぽいことはいくらでも言えるが、自分から湧いた言葉はまだない。

ただ、こういうものはすぐに湧かなくていいとも思っている。いつか湧く時が来るかもしれないから、今はとにかくよく見ておけば十分だ。そう思って20分ほど眺め、新たなご遺体に火がつけられ始めたあたりで火葬場から離れた。

明日はマニカルニカーにも行ってみようと思う。



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