宿に向かう前にもう一つだけ寄った場所がある。ハマムというお風呂施設だ。トルコ伝統の施設らしく、事前の下調べで発見して絶対に行こうと思っていた。
というのも、インド以前とトルコ以後で気持ちを切り替えたかったのだ。
中国、インドまでは、なんというかその、汚かった。国がというのもほんの少しなくはないが、どちらかというと自分が、である。海外旅行初心者的には、そもそもこの2カ国での生活はサバイバル的な意味合いが強く、清潔さとかそういうものの重要性が劣後していた。シャワーは毎日浴びるものの、ヒゲは伸ばしっぱなしで服も連日同じものをきてしまうなど、なんとなく「汚ねえ状態だな」という感覚がずっとあった。そして特にインドには、そんな汚い存在をものともしない度量(?)があったので問題はなかった。
しかしこれから行く場所はトルコであり、ヨーロッパだ。インドには申し訳ないが、清潔さの格が違う。イスタンブールで2日連続で同じ服を着たらコーランで殴られる。
変わる必要があった、汚い俺から綺麗な俺に。そのための儀式として、トルコ伝統の風呂であるハマムに行くことがぴったりだと思ったのだ。
というわけでハマムを探した。結構高いところが多く「うーむ」の唸っていたが、最低限のハマムのセットで45分7000円、レビューも悪くないところを見つけたのでそこに行った。
初ハマム。
まずは全裸になる。その後、トルコ風なバスタオルを腰に巻く。スタッフに案内されて行ったのは、大理石部屋みたいなところで、そこの台座で20分寝ろと言われた。
この台座はあったかく、いわゆる岩盤浴のようなものだった。上を向くとモスクの中みたいな天井で、光が差し込んでいた。
他にお客もいなかったので静寂の中、あっつい大理石にタオル一丁で仰向けに寝転んでいると、妙に心地よかった。インドの喧騒が遠い過去のように感じられ、楽園に来た気持ちになった。
20分経ったあとはサウナに10分入れと言われた。サウナはそれほど暑くはなかったが、すでに20分の間を石に蒸されており汗は十分に出ている。しばらくするとスタッフさんが入ってきて、石にハーブの粉みたいなものをかけてくれた。一気に鼻がスースーし、決して日本の普通の温泉施設では味わえないサービスを経験して「うひょー最高ー」となっていた。あれは日本でも是非やってほしい。
合計30分しっかり汗をかいたあとは、体を洗われるタイムになる。
また大理石の台にねっ転がされ、まずは垢すりをされる。ちなみに人生初の垢すり。
「ああ〜インドの垢が落ちていく〜最高だ〜」と、とにかくインドから解放されていく喜びに浸っていた。
その後は尋常じゃない量の泡をかけられて体を洗われた。おそらくここがこのトルコ伝統のハマムのハイライトである。ずた袋のようなタオルに空気を含ませ、ぶわっと上手いことやると、大量の泡が生成される。それを2、3回喰らうと、一瞬で体がミシュランマンになる。あんなにもこもこになったことはなく、感覚が面白かった。
ミシュランマンになったあと、体のマッサージもしてくれ、その後お湯をかけられ、ついでに頭も洗ってくれた。最後に冷水をかけられて「ひゃあっ」となってハマム終了。
汗を大量に流し、垢すりをし、体も頭もキレーに洗ってもらった。もうこれで俺は生まれ変わったのだ。
ハマム後は「リラックスタイム!」と言われ、ロビーで紅茶を出してくれた。さっきも書いた通りお客は俺一人だった。陽の差し込む広めのロビーで一人良さげなソファーに座って静かに浸る時間は良かった。
急ぎがちな性格なので、この時の「リラッークス!」の言葉が妙に印象に残った。ハマム、とてもおすすめです。