前の日記で「ハプスブルク家関係の本を一冊読んでみたい」と書いたが、なんと本当に読めた。我ながら「よくやった!!!」と自分の肩を叩いてあげたい。
選んだ本は中野京子さんの『中野京子と読み解く クリムトと黄昏のハプスブルク』という本だ。ハプスブルク家の歴史を、好きな画家であるクリムトに絡めているという、「これしかない!」という本だった。しかも190ページ程度とちょうど良い分量。
さらにちょうど良いことに、今日行こすうと思っていたベルベデール美術館が時間予約制だった。そのことを知らずに朝10時に美術館に行くと、13時の入場と言われた。3時間あればのんびり読んでも新書一冊は読める。
ベルベデール美術館はベルベデール宮殿という宮殿の中にある。なのですぐ近くにたいへん綺麗なお庭があったので、そこの木陰のベンチに座って本を読むことにした。
ハプスブルク家のお膝元ウィーンでクリムトの絵を見る前に、ハプスブルク家とクリムトの本を、庭園のベンチで読む。かなりかなり贅沢だと思う。
昨日ウィーン市内をこれでもかと歩き回っていたので、本の中には昨日実際に見た教会や、絵の話が出てきた。そして、これからベルベデール美術館で見る絵について語られており、見る楽しみが増した。
その土地に関する本を読んでみる。旅行にはこういう楽しみ方もあるなという発見があった。
読んでいて、ハプスブルク家があのスケートや劇でも頻繁に登場する「エリザベート」の嫁ぎ先と分かり、一気に親近感が湧いた。いつのまにかサブリミナルハプスブルク家されていたのだった。
本にはエリザベートの強い意志エピソードが書かれており、加えて彼女の夫ヨーゼフも、苦労人ながら帝国終焉の最後の最後までけなげに公務に勤しんだというエピソードが書かれていて、2人のファンになった。
と、非常にご満悦で本を読んでいると、ベンチの隣の男が話しかけてきた。ヨーロッパで話しかけられることは珍しい。
「Where are you from?」
「I’m from Japan. You?」
「India」
出たよ、インドだ。
見た目から何となくそんな気がしていたが、そうだった。
こちらとしてはハプスブルク家とクリムトの物語に浸っていたので、集中して本を読みたいと思っていたところ、インド人男は「インド行ったことある?」「どこ行った?」と、どうでもいい話を振ってくる。
こっちも無視すればいいのに、久しぶりのコミュニケーションのチャンスで少し舞い上がり、「ちょうどインド行ってきた!」といらんことを言ってしまった。
「ジャイプール行った?俺ジャイプール出身なんだよ!」とどんどん話が広がり、しまいにはとなりで勉強してた女性にも声を出した。
女性はあからさまに鬱陶しそうな顔をしていたのに、男は構わず話し続ける。相変わらず馴れ馴れしいやつだ。
しばらくすると彼女らしい人がやってきて、「Have a good time!」とサラッとどこかへ行ってしまった。さすがウィーン。インド人ですらサラッとクールに去っていく。
そんなこんなしていたら美術館入場の時間となった。本も無事読み終わったので、作品を見るのが一層楽しみだ。