ヘルシンキからタリンまでフェリーで移動する。日帰り観光が可能なのだ。
バルト海。片道2時間。
どんどんヘルシンキの街が遠くなっていき、ちょうど1時間ほどすると海以外見えるものがなくなった。
フェリー後方の、窓側に置かれた椅子に座って海をぼーっと眺めていた。ちなみにフェリー前方はビジネスクラスの客のみが入れる資本主義仕様になっていた。
船での移動はこの旅で初めてだった。さらに、偶然今読んでいる『竜馬がゆく』でちょうど竜馬が念願の軍艦を手に入れて航海し始めたこともあり、ただ海を眺めているだけでも思うところも多かった。
竜馬も見ていた光景なんだろう。魅力的に描かれる竜馬にすっかり魅力されているので、海を見るだけで不思議と心が湧き立つ。
バルト海と太平洋、場所は当然違うが、ほぼ見える景色は同じだろう。
というか、島も何も見えないような、今見ている「水平線のみの景色」というのは、1万年前も1万年後も変わらない、地球上で最も変わらない景色ではないかと思った。
変わらない景色は、妄想を過去へ飛ばす。
竜馬から更に遡り、初めて船を乗って別の島や、別の大陸に、粗末な船で漕ぎ出した原始の人々を想った。その人たちも、今自分が見ている光景と同じものを見ていたはずだ。
遥かな海を見て古代人たちは何を思ったのだろうか。そして、未来人は同じ景色を見て何を想うのだろうか。