朝ご飯を食べようと共有スペースに入ると、出国前によく聞いていたフォーマットのYouTube音声が聞こえてきた。
「〇〇(英語の音声)、△△(中国語の音声)」
語学学習用のYouTubeだ。ヒアリング能力と記憶力がなく、具体的なワードは分からない。
この時間はまだ照明が付いていないので部屋は薄暗い。よく見ると右側の席にこのホステルのオーナーがいて、このYouTubeを聞いていた。
思い返すと、初日に宿であった時から「コンニチハ。ゲンキデスカ?」と日本語で話しかけてくれた。初日以降も顔を合わすたび、毎回日本語で話しかけてきたので印象に残っていた。
この日もしばらくするとこちらに寄ってきて会話した。「言語が好きなんですか?」と聞いてみると、「I’m studying Chinese this week. One week Chinese, one week Japanese, one week French. 」と答えた。「勉強することは、私の新しい趣味です」とも日本語で言ってくれた。
オーナーは50代くらいの男性である。このオーナーが朝8時から、一人で暗い部屋の中で黙々と語学を勉強する姿は端的に言うと「かっこよく」映った。
「かっこいいな」と思う気持ちを大切にしている。適度に目立ちたがりなので、色んな行動の根本には「かっこよく見られたい」という少年のような気持ちを変わらず持ち続けている。
この「かっこよさ」とは何から来るのだろう。今日は移動日で特にやることもないので少し考えてみた。
ストレートな回答ではないけど、「自分であることの強い覚悟」は重要な要素だと思った。「自分であること」とは、他人に依存しないこと、世間がどう見ようと関係なく自分の好きなものを求め続けること、それに自信を持つことなどを指す。「強い覚悟」とは、それを貫き通すことを指す。
この旅も、「かっこよさ」の試金石と思って実行を決意し、現在頑張っている節がある。
引用が好きなので関連する2つの言葉を紹介したい。
一つ目はNHKのWebページ「人×物×録 あの人に会いたい」という名言まとめみたいなところで発見した、ファッションプロデューサー石津謙介さんの言葉。
折りしもマイブームが「ダンディー」だったので、この言葉を発見した時は響いた。
もう一つは「ダンディー」をマイブームにさせた作品、『紅の豚』のキャッチコピー。こちらは有名だろう。
この言葉には語りきらないよさ、余白があるのがよい。無粋にもこの余白を埋めようとすれば、それこそ石津さんが言うような「まぁお前らには分からないと思うけど、俺にはこういうことがかっこいいと思ってるんだよ」ということになるだろう。
妄想は広がったが、ホステルのオーナーの一人で勉強する姿には、こんなかっこよさが見えたということが言いたかった。ちなみにオーナーの見た目はポルコというよりらカーチスに似ている。