出国前日、空港近くのホテルに妻と泊まった。
このホテルで、旅の打ち上げをした。
この打ち上げはちゃんと事前に内容を練った。
練った末に、プログラム表を1枚仕上げた。
この旅を振り返りつつ、単身留学が始まる妻と、単身お留守番が始まる自分の覚悟を固める儀式的な意味合いを込めている。
開会の言葉から始まり、乾杯とご飯タイム。このために事前にスーパーでビール2缶と、つまみのポップコーンを買っておいた。
ちなみにこのポップコーンで翌日お腹を壊した。Hotという文字を見落としていた。辛いが美味しくて、ほろ酔いもあって爆食いしてたらお腹がデストロイした。
酒が回りだしてから、インタビューという形式で妻に旅の感想や留学への思いを語ってもらった。
そこそこ飲みの激しかった時代の部活で育った2人。
シラフでもなんでも話せると思いきや、やはり酒が入った方がいつもより深い話ができる。なるほどそういう思いもあったのかという新たな発見もあった。
酒は飲むべきだ。
インタビュー後、簡単なお手紙をプレゼント。何か記念があると、お互いに贈る習慣がある。お互い毎回文章力が試される。
そして、斉唱タイム。
振り返ると、この時間が多分2人とも最もハイテンションだった。
「何か歌うと面白いのでは?」というこの謎アイデアは、前日に降りてきた。会のクライマックス、やはり音楽のチカラを借りると最高に盛り上がるのではと考えたのだ。
問題は何を歌うか、である。ちゃんと打ち上げ全体を練って愛着も出てきてしまったので、半端な曲では不足である。何様だ?
選ばれたのは中島みゆきの『銀の龍の背に乗って』でした。
元々好きだったことに加えて、ガチャピンのカバー動画が家庭内ミームになったこと、そして旅の間なぜか妻が一瞬「銀の龍の背に乗って」の話をしたことでピンと来、抜擢させていただいた。
歌う曲は妻に伏せておき、斉唱のタイミングでイントロを流してまずひとウケを獲得した。
NYのホテルに響く『銀の龍の背に乗って』―
〜〜〜
夢が迎えに来てくれるまで震えて待ってるだけだった昨日
明日僕は龍の足元へ崖を登り呼ぶよ
「さあ、行こうぜ」
銀の龍の背に乗って届けに行こう命の砂漠へ
銀の龍の背に乗って運んで行こう雨雲の渦を
〜〜〜
熱唱。
なぜか2人の目は潤んでいた。
中島みゆきはすごい。すごすぎる。
単純でない表現で、みんなの背中を押してくれる。
『銀の龍の背に乗って』は2人の記念曲となった。
余談だが妻とはよく「〜ぜ」、という語尾を使うので、
歌詞にある「さぁ、行こうぜ」は2人に馴染む。
妻はアメリカ、自分は日本。
場所は違うものの、「さぁ、行こうぜ」と言いたい。
住む場所が違うだけで、目指すところは一緒だ。