家づくりの一連のプロセスの中で最も印象に残った場面はどこかと聞かれたら、土地の決済完了後に不動産屋の叔父さんからもらったメールを読んだ時だと答えるかもしれない。
メールには、土地決済お疲れ様でした、という内容に加えて以下のメッセージが添えられていた。
「来年からは◯市民ですね。ようこそ◯市へ。
地域を楽しみ利用しつつ、同時に地域を支える知性になっていただければと思います。
地域人としてのご活躍も楽しみにしております。」
購入したのは、生まれ故郷の土地だった。
社会人になってから実家を出て数年、いくつかの場所に住んでから戻って来る形だ。
当時、というか今も、「地域」という感覚は希薄だった。実家にいたときはこの場所が当たり前だったし、実家を出てからも「ここにずっと住むわけじゃないしな」と思っていた。
今度は違う。
一度地元を出て、他の地域があることを知り、地元に戻って来る。
しかも今度は、長く住むだろう。ローンあるし。
地元への愛というのは、地元を出てから高まるようだ。
土地も、やっぱり買うなら地元がいいなと迷いなく決められた。
実際に買うまではなんとなく漠然とし気持ちだったが、叔父さんからのメールの中にある「地域人」ということばは、自分の中で何かを明確に結晶化してくれた。
地域を楽しむ、という視点をちゃんと味わったことはない。
地域に還元しよう、とちゃんと考えたこともない。
「地域」ということを、生まれて初めて強く自覚したのが、叔父さんからのメールだった。
地域を楽しみながら、地域を支える。
そんな生き方をしたい。